気分が落ち込みやすい思考パターン 7選 ~ 気分の落ち込みへの対処法を考える ~

 気分が落ち込んだとき、すぐに明るい気分を取り戻したくなりますよね。何をしてでもできるだけ早く落ち込みから解放されたいし、脳はすでに知っている回答から答えを出そうとします。例えば、アルコールを飲んだり、ゲームに夢中になったり、賭け事にはまったり、薬物を使ったり。でもみんな知っている通り、これらは根本的な解決ではないため、酔いがさめたり、電源を切ったり、予想が外れたり、効果が切れたら元の落ち込んだ状態に戻ってしまい、それを繰り返すうちにどんどん気分が落ち込んでいってしまいます。

 では、どうして気分が落ち込んでしまうのでしょう?

 実は気分が落ち込むときには決まった思考パターンが表れていることが知られています。ただ、この思考パターンの厄介なところは、ほとんどの人で無意識のうちに表れてしまい、なかなか防ぐのが難しいことなんですね。ですので、対処法としてはこの思考パターンをあらかじめ知ることにより、その思考パターンに陥らないように意識することが重要です。ここでは、その思考パターンのうち良くある7つのパターンを見ていきますので、ご自分と照らし合わせて対処法を考えてみましょう。

 

1.全か無かの思考

 白か黒かなど、絶対的で極端な思考パターンは、たとえば「私は成功者か、完全な敗北者のどちらかだ。」「完璧でなければ、醜い」「間違いを犯すくらいなら、やらないほうが良い」といったグレーゾーンを受け入れる思考がないため、落ち込んでいると悪い方向へ極端に考えてしまい気分をさらに落ち込ませてしまいます。現実はグレーゾーンのほうが圧倒的に多いのですが、思考が感情的になると受け入れのハードルを高くして白黒つけようとしてしまいがちなのです。でもこれは脳がバグっているわけではなく、ストレスにさらされた脳が世界は確実で予測可能だと思いたいだけなのです。こんな時は、物事を論理的に考えてあらゆる側面から検討し、より多くの情報に基づいて結論を出すようにしましょう。

 

2.心のフィルター

 自分や世界について何かを信じているとき、脳は周囲を見渡して、それが真実だという証拠を見つけようとします。その時、自分の信念とは異なる情報にぶつかると、脳はその情報を全力で否定し、たとえそれが苦痛を伴うとしても自分の信じている内容に合う情報だけを集めようとします。そんなわけで落ち込んだ時に自分はダメな人間だと思っていると、別の視点からの情報をすべてシャットアウトし、自分がダメな人間だという証拠だけに執着してしまう。たとえば、SNSに写真や主張を投稿したとき、多くのフォロワーが肯定的なコメントを書き込んでくれているのに、落ち込んでいるときには否定的なコメントばかりに目がいってしまう。そしてそれを見つけるとそのコメントに対してじっくり考え、傷つき、自信を無くしていく。自然界で生きるためには、自分が弱い存在だと感じて脅威の兆候を探すのは理にかなっていますが、落ち込んだ状況から抜け出す時にはこの心のフィルターを外しておかなければならないのです。

 

3.感情的な推論

 思考は必ずしも事実ではありませんし、感情も事実ではありません。感情は脳の中の情報の一種に過ぎないのですが、その情報が強く激しく揺さぶられてしまうと、あたかもそれが実際に起こっているかのように思い込んでしまいます。「私はそう感じるから、それが事実に違いない。」つまり、そうではないという証拠がたくさんあっても、感情だけに基づいてそれを真実と決めこんでしまうのだ。たとえば、何かの試験を受けた後に気分が落ち込んでいると、試験の出来が良かったとしても脳は感情から情報を得るので、試験に落ちたはずだと告げる。受かるとは思えないのだ。気分の落ち込みは試験のストレスや疲労から来ているかもしれないので、常に状況を正しく理解できているか確認した方が良いでしょう。

 

4.過度の一般化

 落ち込んでいると、たった一度の失敗でも、そのせいで何もかもうまくいかなくなることがあります。たとえば、朝、出がけにコーヒーをこぼし、こぼれたところを拭いていたら遅刻しそうになってイライラし、今日は災難だと思ってストレスを感じる。たった一つの出来事をその日が最悪の日である予兆だと思い込み、今日は絶対悪夢のような一日になると決めつけて出かけるのが億劫に感じるのが「過度の一般化」である。この思考パターンは絶望に向かう危険な坂道となるので気を付けてもらいたい。特に失恋の時に現れやすい思考で、ある恋が終わった時に、自分は恋愛を成就させることができないポンコツで、今後誰とも幸せにはなれないと思ってしまう。これは放っておくと苦痛がますます強くなり気分がいっそう落ち込むので、これは特別なシチュエーションであり二度と同じ場面は現れないということを認識してほしい。

 

5.マインドリーディング

 自分の周囲の人が何を考え、どう感じているのかを理解するのは社会生活を行っていくうえで重要なことで、非常に多くに時間をこれに費やしています。しかし、気分が落ち込んでいるときには自分の推測を真実だと思い込みやすく、「友達が変な目で見てるので、嫌われているに違いない」と変に勘ぐってしまいます。落ち込んでいないときには、どうしてそんな目で見るのかと文句をいうくらいなのに。実はこれには理由があって、落ち込んでいるときには周囲の人に励ましや安心感を求めようとするため、それらが得られないと無意識のうちに相手が自分のことを良く思っていないと決めつけてしまうのです。そして、これが行き過ぎると最悪の自己批判になりかねませんので、そうなる前に、本当は目にゴミが入ったので目を細めていただけであるとか、変な目で見ていたのは全く自分とは関係のない人だったとか、とにかく事実関係を確かめることが必要になります。

 

6.~すべき思考

 「~すべき」、「~しなければならない」には気を付けてください。これらは人を不幸のスパイラルに追い込む、過剰な期待となる可能性があるからです。たとえば、「わたしは~と感じるべきだ」とか「私はもっと~でなければならない」といった感じに周り人の価値感を完全無視した期待となります。また、これらの思考は完全主義の思想と結びついています。「絶対に失敗したくない」と思っているのにうまくいかなかったりすると、感情が激しく揺れ動いて気分が落ち込んでしまいます。成功を得る過程では、いくつかの失敗はやむを得ないはずですが、非現実的な目標を掲げるとそれにとらわれて身動きが取れなくなります。「~すべき」、「~しなければならない」には気を付けよう。特に気分が落ち込んでいるときには、平常時の自分と同じ成果を期待するのはやめましょう。現実的ではありませんし、有益でもありません。

 

7.自己中心的な考え方

 調子が悪く、つらいと感じているときには視野が狭くなりがちです。こんな時には他人の考えや見解を推測しにくくなり、他人との価値観の違いを理解しにくくなります。たとえば「時間を守る」というルールを決めている人が、周りにもこのルールを強要し、相手がそれを守らないと怒ったり、傷ついたりするのがこれに当たります。こうなってしまうと他人に寛容でなくなり、気分はいっそう落ち込んで人間関係にも支障をきたすほどになりかねません。これはコントロールできないものを無理やりコントロールしようとするために生じる矛盾であるため、一歩引いたところで価値観の違いを意識してから話すようにしましょう。

 

 落ち込みへの対処法を見つけるには、これまでどんな方法で落ち込みを紛らわせてきたかを知り、脳に記憶されたすぐに効果のある方法は長続きせず、結果的に状態を悪化させてしまうこと、効果を長持ちさせる方法は効果が出るまでに時間がかかることを認知する必要があります。気分が落ち込んでるなあと感じたら、是非ご自分の思考パターンが上記のどれかに当てはまっていないか確認してみることをお勧めします。

 ※本記事は「メンタルマネジメント大全」(ジェリー・スミス 著 野中香方子 訳;河出書房新書)を参照して執筆しました。

 

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